真夏に始まった「栃の実 プチプロジェクト」は、忙しい日常の合間を縫って、地道に進行していました。
9月下旬から、栃の実の灰汁抜きを始めました。
水を張ったバケツに栃の実を入れ毎日水を替え灰汁抜きをしたら、だんだん酸っぱいにおいは無くなり、水が澄んできました。
五十嵐さんは栃の実が気になるようで、積極的に水換えをしてくれました。
2週間経ち、ちょっとかけらをかじってみると、苦い…もう1週間かなぁ。
3週間経ち、かじってみると、ちょっとはマシになったかなぁ。
何しろ初体験のことばかりなので、全て手探りです。自分の直感に頼るしかありません。
昔の人は、行程ごとにコツがあってそれを伝承していったのでしょうね。そんな「おばあちゃんの知恵」的な伝承は、残念ながら忘れられてしまっています。
次の行程は、木灰で仕上げの灰汁抜きをします。
La Manoは藍を醗酵させるために木灰を使用しているので、都合良く木灰が手に入りました。
木灰を栃の実にまぶし、熱湯をかけ、2〜3日そのまま放置し灰汁を抜きます。まだまだ時間がかかります。気の長い作業です。
さて、3日後、木灰を洗い流しちょっとかじってみます。
「にがっ…」木灰の苦さもあるのかしら?もう一度木灰をかけて2〜3日放置。
さてさて、かじってみます。苦いながらもその奥にほのかな甘みを感じます。でも苦い…木灰の苦さかもしれないので、水を張ったボールにいれ冷蔵庫で寝かせます。次の日、水の底の方に黄色っぽい色素が出ています。水を替え次の日、水は透明に近くなりました。
もういい頃合い?ついに栃の実を蒸す行程に進みます!
30分くらい蒸してフタを開けたら、黄金色に蒸し上がっていました!
うれしそうな五十嵐さん。1つ食べて「おいしい」とのことです。良かった〜!私もちょこっとかじってみたら、独特の風味が鼻に抜けます。
昔食べたことがあるような懐かしい味…でも何だろう?記憶はモヤモヤのかなたに。
まだ苦いですがほのかな甘みも感じます。
実そのものは初めて食べるのに懐かしさを感じる、何とも不思議な食べ物です。
このままだと苦みが気になり美味しくないので、やはり栃餅などに加工する必要がありそうです。
とりあえず、すりつぶして冷凍保存することにしました。
五十嵐さんは、鼻歌を歌いながら一生懸命すりこぎで丁寧にすりつぶします。手が痛くなるので左右かわりばんこに持ち替えて、滑らかになるまでこだわります。
五十嵐さんに「自分一人で食べたい?みんなに食べさせてもいい?」と聞くと
「自分ではない」「みんな食べる」とみんなに食べさせたいと言ってくれて、いい笑顔を見せてくれました!
長い長〜い時間をかけて食べられるようにした栃の実を、みんなと一緒に食べたいという五十嵐さんの気持ちに感動しました!
数日後。
さあ、ついに栃餅を作る日がやってきました。
残暑厳しい中栃の実を拾い、長い長〜い灰汁抜きを終え、蒸してすり潰し下ごしらえが整いました。
お昼にメンバー・スタッフに栃餅をふるまうために、11時から調理を始めました。
切り餅を電子レンジで温め、栃の実をすり潰した粉を加えます。お餅が冷める前に手際良く!
五十嵐さんの頑張りどころです。
メンバー・スタッフ合わせて本日は40名なので、40個分になるよう切り分け、直前にグリルで焼いて黒蜜&きなこをかけできあがり!
ほんのり栃の実の風味がして、かすかに感じる苦みは黒蜜の甘さを引き立て美味しくなりました♡
みんなにふるまう五十嵐さんは、誇らしそうでとっても嬉しそうです。
夏に栃の実に興味を持ち、地道な灰汁抜き作業を経て、みんなにおいしい栃餅を食べさせたいという想いが叶いました。
「栃の実プチプロジェクト」は、五十嵐さんの栃餅を食べた瞬間のうっとり笑顔をもって終了しました。
(朝比奈)
前半「栃の実プチプロジェクト その1」もぜひご覧ください。