ラ・まのバナー
ホームページ↑

2017年11月08日

ヒラトモさんのフランス、パリ・ナントの旅

1.jpg2017日本/フランス障害者の文化芸術国際交流事業 ジャパン×ナント プロジェクト 日本のアール・ブリュット「KOMOREBI」展に、La Manoより、五十嵐朋之さん稲田萌子さん平野智之さんが出展しています。
10月19日〜26日、ジャパン×ナント プロジェクト国際交流ツアーに、平野さん(以下ヒラトモさん)が参加してきました。フランスに羽ばたいたヒラトモさん。
フランスでのヒラトモワールド、展覧会・プログラムの様子をご報告します。
  
 
19日。羽田空港に集合、出発。
ヒラトモさんは空港の働く車両に興味津々。「飛行機の働き」に目が釘付けでした!
雨の中、10時35分に羽田空港を出発。約12時間30分かけてパリ・ド・ゴール空港に到着。現地時間16時10分。時差7時間。日本時間だと23時10分、夜中のはずなのにまだ明るい。身体が戸惑っています。ヒラトモさんいわく、「時間が逆戻り」。
ホテルに向かうバスの中から、北海道に似た広大な牧草地が見えました。フランスはEU最大の農業国、パリの郊外に農地が広がっていることに驚きました。これから移動の度にそんな風景を目にすることになります。添乗員さんいわく「商売っ気のないフランス」では、日本の郊外で目にするような看板が一切ありません。広大な農地の中に点在する石造りの家、ゆったりと牛や羊が草を食んでいる姿は、経済発展を追い求めて来た日本が忘れてしまった豊かさを象徴しているように思います。このあとの日々、そんなフランスの文化に様々なカルチャーショックを受けることになりました…。

2.jpg
20日。パリ観光。
コンコルド広場、凱旋門、エッフェル塔、モンマルトルの丘、サクレクール寺院…、パリの王道の観光名所を巡りました。パリ在住の現地ガイドさんのアドバイスは、スリが多いのでパスポート・大きなお金は腹巻に入れてとのこと。パリ初心者の私はしっかり腹巻にしまい込み、ドキドキしながら華のパリ観光。目つきの鋭い女の子グループ、「あの子はスリよ」とガイドさん。外国の地で日本は安全な国なんだなぁと改めて実感しました。
さて、古い街並みを当然のように保存している美しいパリを急ぎ足で散策。石造りの外壁を残しつつ内側を改装しているそう、手間とお金をかけ改装して美しい景観を保っているパリの美意識は、すばらしいです。フランスの天候は移り変わりやすいですが青空に恵まれ、みなさん絵葉書のような写真が撮れたことでしょう。
ツアーバスの中のでは、ガイドさんから現地で暮らしているから分かるフランス人について教えていただきました。日本より北に位置するためか、パリの人々は健康のため日光浴を好んでいるようです。美白が流行りの日本では考えられないことですが、フランス女性はそばかすやシミがあることが魅力なんだそうです!路上駐車が多いパリの道路。隙間なく縦列駐車をしています。どうやって出るのだろう?ご心配なく。前後の車のバンパーに体当たりして隙間をつくって出るそうです!
そんなビックリ話を聞きつつ観光をしていると、ガイドさんの斜め後ろのに陣取ったヒラトモさんが、話の合間にいつものヒラトモ節を大きな声で披露。「もえちゃんの…」と内輪ネタはみなさんに伝わらず残念。地下鉄が地上に出ている所では「あの!これ地上鉄!」と大はりきり。長いボケが決まってみなさんが笑った時は、とっても嬉しそうでした。みなさんお付き合いありがとうございました。

21日。ナントへ向けて出発。
トイレ休憩で立ち寄ったドライブインでカルチャーショック。なんと(ダジャレじゃないですよ)トイレに便座部分がないのです!添乗員さんにいわくフランスでは良くある事だそうです。座り心地悪くないのかなぁ?掃除がめんどくさいから?頭の中にハテナマークがプカプカ浮かびました。でも、フランス人から見れば、添乗員さんに言われたままトイレに長蛇の列で並んでいる日本人は奇妙に見えた事でしょう。

7.jpg
途中、ル・マンのノートルダム寺院と旧市街を散策。
フランスに来て初めて教会の中に入り、神聖な空間に感激。教会は数百年かけて建てられるので、ロマネスクとゴシックという異なる建築様式が共存しているのに時間の蓄積を感じました。私はロマネスクのプリミティブで素朴な彫刻が好き♡
旧市街の街並はヒラトモさんの大好きな童話の世界のようでした。きっとイメージが広がったことでしょう。
3.jpg

ランチは、窓からノートルダム寺院が一望できるステキなレストランで、野菜のクリーム煮がたっぷりかかったチキンを食べました。お腹いっぱいになった後、丸ごとリンゴの巨大なパイが…満腹でうつらうつらしながらナントへ。

ナントはロワール川が大西洋に注ぎ込む河口近くに開けた街。「レ・マシーン・ド・リル」というアートプロジェクトがあり、「現代アートの街」として有名。フランス人が最も住みたい街とも言われているそうで、ゆったりと落ち着いた雰囲気の街です。
「KOMOREBI」展の会場のリュ・ユニック フランス国立現代芸術センターは市民に愛されてきたビスケット工場をリノベーションし、2000年に開館しました。演劇やダンス、ビジュアル・アート、音楽、文学など分野を問わずイベントを企画している施設です。
13.jpg


この日は、夕方からオープニングレセプションがおこなわれました。関係者のみかと思っていたらたくさんのナント市民の方々がご来場くださり、嬉しい賑わいでした。みなさんの関心の高さがうかがえました。
4.jpg

iga.jpg五十嵐朋之さんの作品。
「人間ダンサー」「昆虫ダンサー」。大好きな昆虫がダンスをしている独自の世界観が魅力。






moe.jpg稲田萌子さんの作品。
フランスで見るとフランス的な色合いに見えるのが不思議です。写真を撮る人が多く人気でした。







hira.jpg作品の前に立つヒラトモさん。嬉しそう。
「NEW美保さんシリーズ」から3つのストーリーが展示され、小さなモニターでも作品が見れるようになっていました。







会場では、NHK Eテレ、ETV特集の取材班の方々と合流しました。ヒラトモさんは来年2月に放送予定のETV特集「境界なき表現〜日本のアール・ブリュット、世界へ〜」(仮題)の取材を、出発前の日本での制作の様子から受けており、フランスでの様子をこの後撮影する事になります。
6.jpg

レセプションの後、フランス側から出展者に会食のご招待がありました。2017ジャパン×ナントプロジェクト スーパーバイザーのジャン・マルク・エロー氏(元首相、前外相)なども参加されていた会食ですが、会場内のカジュアルな雰囲気のレストランで和やかに行われました。
フランスは日本に比べ夕食の時間が遅いようですが、始まりの時間が8時半からのはずが9時過ぎになり、なんともゆったり。日本のように挨拶の言葉もなく、なんとなくそれぞれのテーブル毎にまったりと始まっています。
ヒラトモさんは作品にも登場するほどフランス料理のフルコースに憧れがあります。「娘(作品中のヒロイン美保さんの事)の代わりにヒラトモが来ちゃった」と言っていました。意気揚々と前菜、メイン、デザートを迷いなく選びました。メインは牛肉リブロースのチーズソースがけフライドポテト添え。時間がゆったりしているフランスらしく、なかなか料理が出てきません。テキパキとしたウエイターですが、あまり順番を気にしていない様子。待ちくたびれた頃、大量のフライドポテトが添えられた大きなステーキがやってきました!お肉大好きのヒラトモさんもギブアップして残すほど。
その後のデザートもなかなかやって来ないので、もう帰ろうか〜と提案しましたが、フルコースを体験したいヒラトモさんは「デザートまで食べる」と譲りません。この会場ならではのビスケットケーキのデザートを食べ終えた後はお腹も気持ちも満足な様子。
夜も更けて、いろいろな体験を胸にホテルに帰りました。
5.jpg


22日。オプショナルツア―、世界遺産モン・サン・ミッシェルへの旅。
8.jpg
カトリックの聖地の一つであるモン・サン・ミッシェル。中世に修道院として築かれ、フランス革命後には陸から切り離された孤島の地の利を活かし監獄として使用され、その後再び修道院として復元されるという数奇な運命を辿りました。
ホテル7時出発。まだ夜明け前。9時くらいになってやっと明るくなるフランスの朝。だんだん雄大な牧草地が車窓に浮かびあがり、のんびりと草を食む羊の姿に和みます。
降っていた雨が上がり二重の虹が見えました。素朴な風景に架かる虹が、モン・サン・ミッシェルへ気持ちを誘います。
地平線に小さく浮かび上がる特徴的なシルエットが見えて間もなく駐車場に到着。大混雑のシャトルバスに乗り換え上陸。ガイドさんの案内で中世に迷い込んだような小道を登り修道院へ。ヒラトモさんご一家と急ぎ足で修道院を見学しました。修道院の中は中世のままのような闇が残る神秘的な空間です。
「ラプンツェル」「美女と野獣」「眠れる森の美女」が好きなヒラトモさんのイマジネーションの中では、モン・サン・ミッシェルは「さらわれの塔」であり、監獄の時代に使用していたような小部屋は「とじこめ部屋」のようです。もしかしたらいずれ、作品「美保さんシリーズ」の美保さんがモン・サン・ミッシェルを訪れるかもしれませんね。

夕方より舞台公演の会場となっている「シテ・デ・コングレ」で交流会が行われました。昨日の会食とはうって変わって日本側が仕切っていたので、日本式に「挨拶の言葉」から始まりました。やはり日本は体裁を重んじる国なのですね。フランスに来て改めてわかりました。
これまでのバスや観光で一緒だった出展者の方ともお話をしました。その中のお一人、木伏大助さんのお母さんとは飛行機の席がお隣で話をしたのですが、「3つ前の席に座っている女性を大助が気に入って一緒に写真を撮りたいと言っているのよ」とうかがい、へ〜と思っていたのですが、なんとその方はヒラトモさんのお母さんだったのです!交流会中に念願かない一緒に写真を撮ることができました。
宴たけなわになってきたころ、会場の熱気と今までの興奮が重なったためかヒラトモさんは少々ナーバスになってしまい、気持ちを静めるために会場中央にスライディング!
さすがアーティストです。みなさんの注目を浴びるパフォーマンスをして落ち着きを取り戻しました。

23日。撮影三昧。
午前中はブルターニュ大公城、サンピエール大聖堂を見学、1843年に建てられたショッピングアーケード「パサージュ・ポムレ」に行きました。NHKの撮影隊もヒラトモさんに同行するためバスに同乗しました。バスを降りて散策。
「パサージュ・ポムレ」付近のレトロな商店街には、なんとヒラトモさんが大好きな靴屋が沢山あるではないですか!うきうきして足取りの軽いヒラトモさんは、デジカメデで写真を撮りつつ「美保さん靴」の話をしながらながらどんどん進みます。追いかけるカメラさん・音声さん・ディレクターの伊勢さん。私も追いかけながらヒラトモさんの言葉に答えます。
9.jpg
10.jpg

あわただしく観光が終わり、ホテルに戻りスーパーで購入したサンドイッチなどでお昼をすますと、今度は伊勢さんのご希望で、ヒラトモさんが大好きなフランスの新幹線TGVを見るところを撮影しにナント駅へ。
TGVの終着駅ナント駅はとても賑わっていて活気があります。撮影隊はどんどん駅の中に分け入っていきます。あれっ改札は?フランスの駅は改札がなく、そのままホームに行けてしまいました。
24両編成のTGVを待ち受ける長〜いホームの端で待っていたヒラトモさん。撮影隊の言葉を聞いて、突然一直線にホームを走り出しました。どうやらTGVが頭からホームに入ってくるところを見たかったらしく、反対方向へと数百メートルもあるホームを全速力で走りだしたのでした。
追いかけるカメラさん、音声さん、伊勢さん。カモシカのように身軽なヒラトモさんには追い付けません。ハーハーゼーゼー…やっとのことでたどり着きTGVを待ちます。その間もデジカメで写真を撮りつつ作品の話をしていました。
本当に自分の作品世界が好きなんですね!
やっと線路の彼方からTGVがお目見えです。それまで写真を撮ったり話をしたり忙しかったヒラトモさんは、TGVがホームに滑り込んで来て目の前を通り過ぎている間、顔を斜めに傾けて一心に見入っていました。まるで脳裏にその姿を焼き付けているように。フランスに来て憧れのTGVを見ることができ思いが叶ったヒラトモさん。
その後、線路に架かる鉄橋の上からもう一本TGVを上から見て、大満足の撮影は終了しました。
11.jpg

この日は、夕方から「湖南ワークショップ」のアーティスティックなダンスをスケジュールの関係で半分だけ観て、昨日たまたま会った出演者の若い女性から、見に来てくださいと誘われた「じゆう劇場」の公演を見に行きました。
「ロミオとジュリエット」のパロディを思わせる作品は、様々な障害がある人もない人もそれぞれがその人の個性だと思える、それぞれの人生まで透けて見えるような作品で、心に響きました。
その後、日本の郷土芸能のすばらしさを「石見神楽」の公演で堪能し、長かった一日は終わりました。

24日。機械仕掛けの動物などが展示されている夢いっぱいの工房「レ・マシン・ド・リル」へ。
朝バスで向かいますがなんだか渋滞しています。それもそのはず突然トラム(路面電車)がストで止まってしまったそうです。さすがフランス革命の国。ストは日常茶飯事だそうで、みなさんストには寛大だそうです。自分の権利は社会的に主張するのですね。でも、滞在期間の短い観光客には困ったことです。
やっとのことで到着。まずは、ナント出身の作家ジュール・ヴェルヌの小説「海底二万里」の世界をイメージした「海のメリーゴーラウンド」へ。
12.jpg

機械仕掛けの海底生物のような乗り物が、水蒸気を吐いたりギクシャクと動きながら回る世界はまさにアートでした。機械仕掛けの巨大な象も圧巻でした。蒸気を吐き出しながらのしのしと歩く姿にヒラトモさんは「蒸気エレファント!スチームエンジンで動くんだ」とご満悦。
13.jpg

食虫植物をモチーフにした作品などもさりげなくありイマジネーションが広がる展示や、造りかけの巨大な動物のいる工房を見学し、アートが産業になっているフランスのパワーに圧倒されました。
でも、ここのトイレは鍵が壊れてばかり…すぐ直せる人がいそうだけど、アート系の職人は細かいことは気にしないのですね。

午後は造形ワークショップに参加しました。
日本のスタッフが出展作家の作品をヒントに様々な素材を用意し、参加者が自由に制作しました。
20.jpg
ヒラトモさんは“ちょうちん”作りに挑戦。美保さんの大きな目を描きインパクトのあるちょうちんの出来上がり。
楽しそうな雰囲気に触発されて平野お父さんもちょうちん作りに挑戦。まるっこいかわいらしい形はヒラトモさんのフォルムにそっくり!絵のセンスはお父さんゆずりだったのですね。
14.jpg
ワークショップの最後には、参加者が作った作品を持って壇上に上がり発表をしました。ヒラトモさんは待ちきれず自分から壇に上がって待っているほどでした。アピール度がさすがです。
15.jpg


夕方は、プロの和太鼓チームとして海外でも活躍している「瑞宝太鼓」の公演に行きました。30分のショートバージョンにとても感動した私たちは、夜の1時間バージョンの公演にも出かけました。
大変な練習量をこなしている事がわかる、完成度の高いすばらしい演奏でした。演奏後はスタンディングオベーションで拍手が鳴り止みませんでした。
シテ・デ・コングレ ディレクターのポール・ビヨドー氏やリュー・ユニック館長のパトリック・ギゲール氏もステージに上がり、演奏者を讃え抱き合っていました。感動的なすばらしい瞬間に居合わせたことは、とても幸福な体験でした。

25日。ナントを後に空港へ。
19.jpg
朝出発し高速を走っていると、朝焼けに赤く染まった飛行機雲のラインがミニマリズムの抽象画のように美しく見え、旅の終わりに近付いた心に染みました。

途中シャルトルブルーと讃えられるステンドグラスで有名なシャルトル大聖堂を見学。
16.jpg
17.jpg

天に向かって上へ上へと向かうゴシック建築の空間。静寂の中、闇にステンドグラスの宝石のような色彩が浮かびます。
第二次世界大戦中はドイツ軍の爆撃に備え、ステンドグラスのガラスを一枚ずつ外し周辺の地方一帯で保管し守ったそう。大切に守られた輝きは聖なるやさしさをたたえていました。
外に出て、青空を見上げると、また飛行機雲と光のアートが展開していました。吸い込まれそうな青空を胸に、名残り惜しいフランスの牧歌的な風景を見ながら空港へと向かいました。
18.jpg

帰りの飛行機で、行きに「逆戻り」した時間を飛び越えて、日本に到着しました。

今回のフランスの旅テーマは、異なる文化、障害のある無しにかかわらず異なる世界を持った人々との出会いと交流だったように思います。
芸術や文学、哲学、料理などすばらしい文化を生み出したフランスのパワーは、規律を重んじる日本人の固定観念を揺るがします。そして、国外に出て改めて日本人のきめ細やかな気遣いや真面目さは凄いと思いました。
また、多様な作品やパフォーマンスを観て体験して、障害は個別の文化とも感じました。お互い影響を与え合えば新たな世界が開けるかもしれないですね。
ヒラトモさんはどこに行ってもヒラトモワールド全開で、フランスでもヒラトモワールドを表現し周囲を巻き込んでいましたした。
そして、フランスで新しい世界に触れ新しい体験をし、“自信”というすてきなお土産をいただいてきました。
これからのバージョンアップしたヒラトモワールドが楽しみです。
心の中で小さな種がふくふくと育っていることでしょう。
(朝比奈)
posted by ラ・まの at 11:30| Comment(2) | イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ナントみたいな芸術都市が日本にもあればいいのに! すてきなご報告ありがとうございました。
Posted by 泉 2117 at 2017年11月08日 19:27
コメントありがとうございます!日本も芸術を地域の魅力として、もっと紹介したらいいですよね。
La Manoもメンバーのすてきな作品を、ご紹介していきたいと思っています。
Posted by 朝比奈 at 2017年11月09日 10:28
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

top